インバル&都響の『マーラー10番』を聴いてきました

東京は赤坂、サントリーホールへと行ってまいりました。
エリアフ・インバル指揮、東京都交響楽団による、『マーラー交響曲第10番』を聴くためです。
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マーラーにとっての未完成交響曲であるこの曲。
さいしょ、インバルが10番を振る、と聞いたときに、それほど行こうとは思いませんでした。
インバル&都響によるマーラー・チクルスは本来9番で終わりで、10番はあくまでつけ足しだろう、と思ったからです。

ですが、インバル先生のマーラーを聴くのもこれが最後かも、と思い、やっぱり行ってくることにしたわけです。
マエストロのマーラーにしては前売りの動きがにぶく、けっこう席が余っていたようで、当日券も出ていました。
やはり“未完成”である10番のマイナーさというか、認知度の低さがチケットの売り上げにも出たかたちです。

10番は、ほとんど完成していた第1楽章をのぞくと、第3楽章が3分の1ほど出来あがっていたくらいで、ほかはスケッチ程度しか残っていなかったようです。
そのため、5楽章通しで演奏するためには、だれかの手による補完が必要となります。
バーンスタインなんかは、マーラー以外の手が入った補筆版をつかうのをきらい、生涯1楽章のアダージョしか演奏しなかったようです。

今回インバル先生が使用したのは、デリック・クック補筆版です。
クックが補筆版を完成させるさい、なんとインバル先生もそれにたずさわっていたのだとか。
まだ若かったマエストロ、マーラーの交響曲もまだ1番、5番くらいしか演奏したことがなかったのに、いきなり10番を振ることになったそうです。
(インバル、マーラー10番を語る公式ツイッターより)

クラシックのコンサートに行くさい、どれだけ“予習”していったかで感銘の度合いがちがうことに気づいた僕は、今回もCDを何度も聴いて本番にのぞみました。

僕は10番のCDは、さすがにあまり持っていません。
そのうちの1つはもちろんインバル&フランクフルト放送響のクック版ですが、もう1つはジンマン&チューリヒ・トーンハレ響による“禁断の”カーペンター版です。
あと、バーンスタイン&ウィーン・フィルによる8番のCDには、おまけで1楽章のアダージョがついています。

カーペンター版はオーケストレーションはゆたかで厚みがあるのですが、いかにもマーラーが書きそうなメロディーを、補筆者が作曲してしまっている部分がみうけられます。
その点、クック版は全体に淡泊なのですが、よけいな加筆をしていないという点で、一番マーラーの意図にちかいと考えられます。
インバル先生もそう考え、クック版を愛用しているようです。

さて、これが最後かもしれないインバル先生のライヴに、期待に胸ふくらませてのぞんだ僕。
今回はC席ということで、あまり席に期待はしていなかったのですが、オーケストラのほとんどま後ろの席でした。
8番などでは、合唱団が立っているあたりです。
ま、これはこれで、インバル先生の表情がよく見える、という利点はあります。

客席には、ぱらぱらと空席も見受けられます。
満場の拍手のなか、インバル先生登場。
あいかわらずお元気そうで、安心しました。

緊張感のなか、1楽章がはじまります。
いきなり、天上のうつくしさ。
マーラーが書いた数々のアダージョの中でも、1、2をあらそう出来じゃないんでしょうか。
もしこの交響曲が完成していたら、マーラーの最高傑作となっていたことはまちがいないと思われるだけに、つくづくその死が惜しまれます。

1楽章の中盤をすぎると、全楽器がいっせいに不協和音をかきならすパートへと突入します。
以前見た映画、『マーラー~君に捧げるアダージョ』では、この不協和音を妻のアルマとの仲がうまくいっていなかったから、と解釈していましたが、僕はそれに異をとなえたいです。

マーラー以後、ベルクやシェーンベルクなどのウィーン楽派はこうした音を多用するようになります。
この不協和音には、マーラーの先進性があらわれていると僕は信じています。

さて曲は、問題の2楽章以降へと突入していきます。
2楽章のスケルツォ。
ホルンの鳴らす単調なリズムからはじまっていきます。

CDで聴くかぎりでは、こんな単調なスケルツォをマーラーが書くかなあ、という感じもしたのですが、じっさいに生演奏を聴いてみると、意外と音に厚みがあり、これはこれでありかなあ、という気もしてきました。
みじかい3楽章、4楽章をへて、いよいよ曲はクライマックスへ。

とうとつな大太鼓の連打から、5楽章ははじまります。
第6番『悲劇的』の死への打撃を連想させるこの大太鼓、10番ではしつように何度もうちならされます。

それにしてもこの5楽章、不安をかきたてる大太鼓が鳴ったり、不協和音をかきならしていたと思ったら、無上の美しい音楽へと切りかわったり、まったくの支離滅裂です。
それはクラシックから現代音楽へのかけ橋のようにも感じられます。
さいごのさいごに、マーラーはとんでもない音楽を書きのこしていました。

最後は、救いを感じさせるなか、音楽は終わっていきます。
9番で“死”というテーマを描ききったマーラー、10番には“希望”をたくそうとしていたのでしょうか。

うーん、今回もいい演奏だった。
10番が“オマケ”だなんて、自分の認識のあまさを思い知らされました。

CDを聴いたときに感じた、2楽章以降の密度の低さも、じっさいにライヴで演奏を聴いてみると、さほど感じませんでした。
この10番、「未完成だから」とあまりに軽く見られている気がしてなりません。
最高傑作となる可能性を秘めていた、マーラーの交響曲中の重要作であるといえると思います。


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サントリーホール入口です。


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サントリーホール前の、車輪状のオブジェ。


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インバル先生、都響との初共演時の写真がかざられていました。
若い! 細い!

明日も当日券が出るようです。
インバル先生最後の雄姿を目撃したい方は、ぜひ行ってこられることをオススメします。



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